医院開業コラム
現場発!クリニックの人材マネジメント 第11回
2017.11.24
前回は、「第一印象の重要性」についてお話させていただきました。
スタッフの質が向上すると、クリニックや患者さんなど、周囲に良い影響が生まれます。当然ですが、医療従事者も具合が悪くなることがあるでしょう。たとえば自分が患者さんの立場になったとして、待合室で順番を待っているときにどこを見ていますか? 自然と医療従事者の動きを見ているのではないでしょうか?
「私の順番かしら……」「私のほうがあの人より早く来たはずなのに……」など、本当に患者さんは医療従事者をよく見ています。経営者は「いつも見られていること」を忘れずに行動するよう、常にスタッフたちへ伝え続けてほしいと思います。
最初はわかっていても、その環境が当たり前になってしまうと意識は薄れてくるものです。また頭で理解していても、行動に落とし込むことができていなければ、相手(患者さん)へは伝わりません。ぜひ、継続して伝え続けてください。
「スタッフの質の向上がどのように患者さんに影響するのか」という今回のテーマについて、私が長年関わらせていただいているクリニックを例に挙げてお話させていただきます。クリニックにお伺いした当時は、挨拶も笑顔もなく、暗いイメージの組織でした。仕事をただこなしているだけの流れ作業のように見え、良い印象もありませんでした。患者さんからも「対応が事務的」「診てやっているという態度が嫌」「忙しそうで話しかけられない」など、さまざまなお叱りを受けていました。
そこで私が初めに行ったことは、患者さんへの「挨拶」と「笑顔」の徹底です。これにより、スタッフはもちろん、患者さんやクリニックの環境までもが良い方向へと変わっていきました。ちょっとした方法とその影響についてお話していきます。
まず「挨拶」ですが、ただの挨拶ではなく、「先駆けて」「素通りせずに」「忙しい場合はアイコンタクトでも良い」という点を重視しました。
次に、笑顔については「心の中では笑顔でいよう」と思い続けること、朝はスタッフ同士で笑顔チェックをすることをお伝えしました。笑顔になると、自然と声も笑ってくれます。私は、これを「笑声」と呼んでいます(医療機関は笑顔がそぐわない場合がありますので、ここは注意が必要です)。
これらを継続するように伝え続けていくことで、今までのお叱りが「話しかけやすい」「優しい看護師さん」「いつも気を使ってくれる」といったお褒めの言葉とともに、「忙しそうだから大丈夫ですよ、待っていますから」と言ってくださる患者さんや、読んだ本を片付けてくださる患者さんが増えていきました。
このクリニックに対するお叱りの内容は年々変わりつつあります。当初に見られた「医療行為」へのお叱りから、今では「なんとなく」「気分的に」といった「感覚的」なクレームがほとんどです。また、現在は開業当時より月平均120名の増患にもなっています。さらに、休日も毎週1日増えました(月で4~5回)。お叱りにおいては、1年で1回あるかないかの現状です。
このように、患者さんが放っておかれていないと感じていただければ、患者さんが待ってくださったり、治療に協力してくださったりと、スタッフが動きやすい環境が出来上がってきます。
重要なのは「表現方法を少し変える」ことです。医療従事者のちょっとした工夫や行動の変化が、患者さんまでも変えてしまいます。これは経営においても重要なポイントとなります。ですから、経営者はスタッフへ毎日伝え続けることをお勧めします。
「継続は力なり」……まさしくその通りだと思います。
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