医院開業コラム
クリニック経営管理術 vol.6
2021.05.17
大きな成功を収めるクリニックに、そのノウハウや姿勢を学ぶ本シリーズ。第6回となる今回は、群馬県内トップクラスの規模を誇り、日本国内のクリニックでの扱いはまだ少ない加齢黄斑変性症の治療を得意とする「高崎佐藤眼科」にスポットを当てます。
インタビューに答えてくださったのは、院長の佐藤拓先生と税理士法人真下経営の干場諒さん。同院の今日までのストーリーから佐藤先生の“組織づくり術”、そして経営分析ソリューション『CLINIC BOARD(クリニックボード)』を活用した経営の体制まで、詳しくお話を伺いました。
佐藤先生が開業を決意したのは、2013年頃。当時はニューヨークに留学して、専門である加齢黄斑変性症について世界的権威(Dr. Yannuzzi、Dr. Spaide)に学び、その後の進路について悩んでいたといいます。
「研究医になるか臨床医になるか、迷いましたね。でも最終的には、臨床医として自身のクリニックを開業することを決意しました。理由や想いはさまざまありますが、やはり1人でも多くの患者さんに、自分が学んできた最先端の治療を届けたかった。
日本では加齢黄斑変性症の治療は基本的に大学病院で扱われますが、アメリカはクリニックでも提供されています。私もそのスタイルに倣い、患者さんにとって身近なクリニックで、質の高い検査・治療を行いたいと思いました。
母校がある群馬県の中でも、高崎を選んで開業した理由は2つあります。1つは、前橋だと群馬大学が加齢黄斑変性症の治療を行っていて、その周辺エリアの患者さんは同大学病院がカバーしてくれていること。そしてもう1つは、交通の要所でもある高崎なら、県外を含めて多くの患者さんの役に立てると考えたからです」
高崎で開業を決めた佐藤先生は、クリニックをつくるにあたり“絶対条件”があったと話します。
「大学でやっていた水準の検査・治療ができなくなるなら、開業しないと決めていました。その最大の理由は“使命感”です。私は当時から失明のリスクを持った患者さんを数多く抱えており、自分ならそんな方々に現時点で最先端の医療を提供できると自負していました。とはいえ、いくら腕があっても、環境が整わなければやりたいことはできません。そこで、自らの使命を果たすべく、現在の規模のクリニックをつくることになったんです」
開業に必要な金額は膨れ上がり、顧問税理士としては当時、「借入金額が一桁違うのでは」と目を疑ったそう。しかし、金融機関に佐藤先生のキャリアや想いを強くアピールして、何とか開業資金を調達。こうして、高崎佐藤眼科は破格のスタートを切ったのです。
開業にあたり、干場さんは今後の経営シミュレーションを作成。先5年の“現実的な見込み”と、すべてが順調にいった場合の“目標”、2種類のパターンを用意しました。しかし「いざ蓋を開けてみれば、目標に掲げたシミュレーションを2~3年でクリアしてしまった」と干場さんは教えてくれました。
「内覧会の時点から予想を超える大盛況で。その状態は開業当初から現在まで変わることはなく、今も私が診療終了後にアポイントをとって伺っても、患者さんが多すぎて1時間半くらいは待たされます(笑)」
そのため、同院がこれまで苦労してきたのは、集患ではなく組織づくりだったそう。受付や検査体制など、各オペレーションの効率化は現在も課題だといいます。ただ、今でもさらに上のレベルを目指しているとはいえ、県内トップレベルの規模で毎日数多くの患者さんを診療している高崎佐藤眼科。組織づくりは、成功しているといえるでしょう。佐藤先生は、そのポイントを「すべてのトラブルをみんなでシェアすること」と話します。
「クリニックを運営しているとトラブルは続発するものですが、私は絶対に感情的に怒らないようにしています……というか、性格的に“怒れない”というのが実は正しいんですが(笑)。もしもミスをしたスタッフを怒ってしまったら、『また怒られたくない』という不安から、トラブルを隠されてしまうかもしれません。私は、それが一番怖いことだと感じているんです。
トラブルが起きたら、すぐに報告が上がってくる雰囲気をつくる。それを受けて私が全体に“どうしたらいいか”と問題提起する。そして現場で解決策を考えてトライし、結果の検証と修正を行う。そういう流れをつくることが、いい組織づくりのポイントのひとつだと思っています」
このように、診療だけでなく組織づくりでも優れた手腕を発揮する佐藤先生。しかし、佐藤先生も経営には苦手意識があるのだとか。経営指標の管理や分析は、基本的には干場さん頼りだといいます。
「クリニックの開業を具体的に考え出して、自分は経営の素人であることを肌で感じました。数字を眺めていても、果たしてその値がどうなのかよくわからなくて……。書籍を読んで情報収集もしましたが、限度があります。やはり、経営のプロにお任せすると安心感がある。干場さんには感謝しています」
経営にはあまりタッチしない佐藤先生ですが、同院が導入している経営分析ソリューション『CLINIC BOARD』と最初に出会ったのは、先生ご自身だったといいます。
【多角的な指標での経営分析を容易にするダッシュボード画面(サンプル画面)】
「開業からまだ間もない頃に、知り合いの医師の講演会に参加しました。そのとき隣の席に座っていたのが、『CLINIC BOARD』(株式会社エムティーアイ)事業責任者で群馬県出身の長谷部さんだったんです。そんな偶然の出会いがきっかけで、製品を見せてもらうことになりました。初見の印象は、“見やすい”に尽きますね。グッドデザイン賞を獲っているだけあって、数字に疎い私も『いろいろ触ってみたい』と思うくらいでした」
その後、佐藤先生から干場さんに『CLINIC BOARD』を紹介すると、「こんなに細かく数字を見られるなんてすごい!」と好意的な反応で、すぐに導入することに。干場さんは、製品との出会いをこう振り返ります。
「通常、私たち税理士が手にするデータは、レセプトや領収書から抽出した数値です。しかしそれだけでは、どうしても見えない部分があります。『CLINIC BOARD』でより細かな数字を見られれば、提案や将来の予測の質がより向上すると確信しました」
では、具体的に『CLINIC BOARD』をどのように活用しているのか、干場さんにお伺いしました。
【要因分析では収益を構成要因別に分解し、各指標が収益にどう影響しているのか把握(サンプル画面)】
「職業柄、数字の分析は好きなので、全部舐め回すように見てしまうのですが……(笑)。特にチェックするのは、要因分析ですね。延べ患者数や新患数、レセプト枚数、リピート率といった基本的な情報は必ず把握します。
【診療行為ごとの算定状況も簡単な操作でデータを抽出(サンプル画面)】
それから、診療行為詳細もよく見ますね。例えば診療単価が下がった際、オペの件数を確認すれば、その数字の変動が妥当かどうかわかる。現状を正確に把握できれば、必要以上に心配することもないし、効果的な対策も立てられます」
そして、最後に佐藤先生と干場さんに聞いたのは“『CLINIC BOARD』をどのような医師に勧めたいか”。佐藤先生は、「感覚的な経営に不安を感じている医師に勧めたい」と話します。
「数字をあまり意識していない医師でも、これだけ可視化されれば現状を把握しやすいはずです。また、全国の平均データとの比較ができるのも、安心材料のひとつになると思います。経営に対して漠然と不安を抱えている方は、ぜひ導入を検討されてはいかがでしょうか」
そして干場さんは「クリニックの方向性を確認するのに役立つ」とし、専門性が高い医師にこそ合うのではと語ってくれました。
「自分が得意なこと、やりたいことを実際にできているかを肌で感じるだけではなく、数字で確認することは重要です。特に佐藤先生のように高い専門性がある医師こそ、方向性がぶれてしまってはもったいないですから。そして、自分がやりたいことと地域の患者さんのニーズがズレていると、いくら高いスキルがあっても生かすことができません。
必要に応じ、その2つを照らし合わせて歩み寄ることも求められるでしょう。このような気づきを得るには、現状の細かな分析が必須です。多くの先生が『CLINIC BOARD』を活用することで、1人でも多くの患者さんに必要な医療が届くようになることを期待しています」
今までの電子カルテ・レセコンの集計機能では、自診療所の状況を十分に把握することが難しいと感じていました。 今まで把握できなかったり、把握するのに手間と時間のかかっていたりした自診療所のデータを、クリニックボードでは簡単に把握することが可能です。 また、重要指標を定量的に把握することで、診療所経営の改善施策を検討し、実行することが容易になります。
詳しくはこちら(https://clinicboard.jp/)
この記事をシェアする