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開業医のための「医院経営相談外来」 Q.5

クリニックの利益が出ているのに、お金が足りなくて困っています。なぜでしょうか?

  • 財務・経理・会計

2016.04.06

クリニックの利益と手元に残るお金は一致しません。手元に残るお金の計算方法を理解して、お金が不足する原因を見つけましょう。 

「クリニックを開院してしばらくは毎月赤字が出ていたが、やっと黒字が続くようになった。しかし、お金はなぜか減っていく……」こんなことがよくあります。利益が出ているのにお金が減っていくのは、先行き不安ですね。こんな時はお金が手元に残る仕組みを理解してその原因を探り、対策をうつ必要があります。

 クリニックの「利益」と「手元に残るお金」の額は一致しません。なぜか?利益が出ると税金がかかるからです。また、お金を払っても経費にならないものがあるので、一致しないのです。

借入金を返済すると、お金を払うから経費になると思いがちですが、元本部分は経費にはなりません。また、土地や建物・設備などを購入しても一度に経費にはなりません。建物や設備は減価償却費として長期間で分割して経費扱いとなりますが、土地は経費にはなりません。

キャッシュ不足の原因を把握する方法

手元に残るお金は以下の計算式で概算することができます。 
手元に残る金額 利益-税金-借入金返済元本+減価償却費-設備投資額+借入金

具体的に私のクライアントの医療法人の例で説明をします。

*この図は経営コンサルタントの和仁達也氏が提唱している「お金のブロックパズル」を利用させていただいています。 

このクリニックは開院して約15年、医療法人を設立して約10年経過しています。売り上げは現在も少しずつ増えていて、利益も安定して1,0002,000万円の間で推移しています。しかし、毎年お金が不足してその都度銀行から借り入れをしています。 先ほどの計算式に当てはめてみると、 
利益 1,000万円-税金 230万円-借入金返済元本 1,800万円+減価償却費 740万円-設備投資 300万円=▲590万円
となり、このお金のマイナスを借入で穴埋めしています。

 この計算式から、この医療法人でお金が不足する原因は、税金、借入金返済、設備投資であることがわかります。中でも特に借入金の返済の負担が大きくなっています。クリニックを開院するときにクリニック併設の住宅を購入しましたが、購入資金はすべて借入金で賄いました。その結果年間の借入金返済の元本額は1,800万円にもなっていて、これがお金の不足を招く最大の原因になっています。

このクライアントは借入金の返済完了が目前に迫っています。返済が完了すると利益が出て、お金も十分手元に残るようになります。院長先生は、「クリニックを開院する時にちゃんと計画を考えていればよかったかな……いい勉強になった。これから開院する人はこういうことを知っておかなければならない」と、しみじみとおっしゃっていました。 

 

「利益がでているから」と安易な節税は要注意

開院の時ばかりでなく、利益が出てくると様々な業者さんが商品やサービスのPRをしてきます。節税をすすめる業者さんもいるでしょう。しかし、このケースでそのようなことをすると、さらにお金の不足が深刻になってしまいます。 

業者の方々はここまでのことを理解できていないことがほとんどです。だからこそ、経営者である院長先生が自分で状況を把握し判断をする必要があります。多額の設備投資や商品・サービスなどを購入する時には、先ほど示した計算式をもとに、お金が回るのかどうかを計算して慎重に判断するようにしましょう。

※このコラムは、2016年3月現在の情報をもとに執筆しています。

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執筆者紹介

近藤 隆二

近藤 隆二
(こんどう りゅうじ)

医業経営コンサルタント
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)
非営利団体 医業経営研鑽会・副会長
米国NLP™協会認定NLPマスタープラクティショナー

大手OA機器メーカーで12年、生命保険会社で12年勤務した後、医業経営のコンサルティングの仕事に携わる。「部分最適ではなく全体最適を考える」ことを貫き、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを得意とする。コミュニケーションを密にすることで、それぞれのお客様にとって本当に良いことは何か、お役にたてることは何かを、常に考え続けている。
近藤隆二氏のホームページ「ドクターよろず相談所」はこちら

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