医院開業コラム
現場発!クリニックの人材マネジメント 第5回
2017.05.24
前回は、スタッフの行動基準を統一するマニュアル作成についてお伝えしました。なぜマニュアルが必要かを理解できなければ、「作る」だけで満足してしまい「使う」ことをしなくなります。これではせっかくマニュアルを作成しても意味がありません。時間の無駄にもつながってしまい、いわば”宝の持ち腐れ”です。そこで今回は「マニュアルを作ることの意味」をお話していきます。
出来事や人によって、感じ方や見え方は違うものです。感情も十人十色。気持ちが違えば、それぞれの行動も変わってしまいます。実際にいくつかの例を見ていきましょう。
1. 頭髪の色
【規定:髪はあまり明るい色にしないようにしましょう】
この規定では、何を基準に色を決めて良いかが曖昧すぎて、本人の裁量にお任せになってしまいます。「明るい」と感じるか感じないかは、その人の感性です。そこで、共通の基準を決める必要が出てきます。医療機関では通常、ヘアカラー協会No.6からNo.7を推奨しています。
⇒頭髪の色は、ヘアカラー協会No.7までとする(マニュアル化)
2. 挨拶をしましょう。
以下の3つのパターンを例とします。
Aさん:自分から挨拶をする
Bさん:忙しいので、とりあえず相手が先に挨拶をしてきたら返す
Cさん:何かをしながらの「ながら挨拶」になるが、一応挨拶はしている
いずれにおいても、上記はすべて「自分は挨拶を実施している」という認識ですが、BさんとCさんは、他者から見ると「挨拶をしていない」という評価になりかねません。場合によっては、患者さんからお叱りを受ける原因にもなってしまいます。誰が見ても「挨拶をしている」という評価をいただくには、意識を統一させるマニュアルが必要です。
⇒挨拶は先駆けて行う(マニュアル化)
ではマニュアル化をすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。マニュアル化は、職員だけではなく患者さんにも良い影響をもたらします。以下に「組織の質」を向上させる重要な効果をまとめました。
(1)統一感が生まれる
(2)組織の方向性が見える
(3)患者さんに「どの職員でも同じ対応をしてくれる」という安心感が生まれる
(4)全職員がすべての患者さんに均等に対応できることにより、信頼関係が築ける
(5)行動や気持ちを統一することで、チームとしての機能を果たす
(6)患者さんからのお叱りを減らすことができ、クレーム対策につながる
マニュアル化を行うことは、職員が仕事をしやすい環境を作るだけではなく、「組織としての質」も向上させてくれるのです。組織の質が良くなれば、職員の質も上がり、最終的には患者さんの質までもが向上します。重要なことはやらされているという「やらされ感」ではなく、意味を知り、「やりたい」を実現することです。一つ一つを実行することで、職場の環境が変わっていくことを体感してほしいと思います。
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