医院開業コラム
医院開業&医療経営レポート
2015.10.20
「クリニックステーション」では、医院開業時にクリニックと調剤薬局の連携による「開業イベント」を重要視しています。
一般に、どの医院でも開業時の見学会は行われていますが、イベントコンテンツや事前告知、当日運営など、隅々まで配慮が行き届いた、質の高い開業イベントを通じてスタートダッシュを行った場合と、行わなかった場合では、開業から6ヶ月までの“のべ外来患者数”に大きな差が出ることがわかっています。
ここでは仮に、軌道に乗ってからの平均外来数を900名/月とします。
オープン1ヶ月後は、スタートダッシュの有無が集患結果に如実に現れ、その差は想定310名。2ヶ月、3ヶ月と時間が経つと差は250名まで狭まり、6ヶ月目には140名程度の差になると予測できます。
時間が経つにつれて、患者数の差は徐々に縮まるものの、スタートダッシュの有無による6ヶ月間の推定患者数の差は1,360名!ですから、スタートダッシュを通じて最初の数ヶ月に集患することは、大きなアドバンテージになるのです。
では、なぜ早期に集患することが必要なのでしょうか?その理由は、医療保険の還付時期にあります。
保険診療の場合、保険料が振り込まれるのは約2ヶ月後。それまでの期間は、借入金などの開業資金と、患者本人負担分の現金収入(1~3割)で賄わなければなりません。もちろんその期間も、人件費、家賃、リース料などの固定費がかかっています。
一般に安定して集患できるまでには、内科では2~3年、その他の診療科でも1年はかかるといわれています。だとすると、その間は開業資金で回していかなければならず、スムーズに集患できなければ運転資金が足りなくなることも・・・。口座残高は減っていき、精神的にも辛くなりがちです。
だからこそ、開業イベントというスタートダッシュで、早い時期に患者を確保することが必要なのです。
例えば、厚生労働省の「平成26年社会医療診療行為別調査」をもとに推計すると、耳鼻咽喉科外来の平均診療単価は4,198円となっています。
この平均診療単価と前述の6ヶ月目までの推定患者数を基準に、新規医院のキャッシュの入り方をシミュレートしてみましょう。
(話を単純化するため、窓口支払い分は一律3割とします。また、診療費以外の経費はここでは省略します)
医院開業後6ヶ月目までのキャッシュイン総額を見ると、その差は500万円近くに!初月から確実に集患することで、キャッシュフローの厳しい時に苦しまずに済むのです。開業イベントで認知を広げ、スタートダッシュで集患することは、開業1年目の明暗を分けるといっても過言ではありません。
マーケティング視点で見ると、たとえば耳鼻科のように、一人あたりの診療単価が他科目に比べて低く、エリアあたりの対象患者数が多い場合には、スタート時に幅広い層に認知してもらうことで、リターンも大きくなります。そのため、開業イベントで広く地域の方と交流することが大きな効果を発揮します。
対して、泌尿器科のように一人あたりの診療単価が高めで、エリアあたりの患者数が比較的少ない場合には、患者となりうるターゲットにしっかりと届くよう、別の手法でアプローチした方が効果的です。
もちろん、開業後に集患状況をみながらイベントを開催することも不可能ではありません。
しかし、開業医の先生方が日々の診療を行いながらイベントの準備を行うのは容易ではありません。それに、診察の緊張感がないオープン時だからこそ、「どんな先生なの?」と興味を持った地域の方々が、気軽に顔を見に訪れてくれるのです。
開業イベントでの集患が不可欠な理由、ご理解いただけましたか?後になって後悔しないために、時間的にも資金的にも余裕のあるうちに手を打っておくことが大切です。
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