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開業医のための「医院経営相談外来」

開業医のための「医院経営相談外来」 Q.9

医療法人を設立しましたが、うまく活用できているか不安です。活用のポイントを教えてください。

  • 法人の活用

2016.08.04

「医療法人を活用できているか」を確認するにあたって、まずは、今後の医業経営の計画や、自分と家族のライフプラン、医業承継の計画などを振り返ってみましょう。それらを明確にした上で、医療法人のメリットをどのように活用できるかを考えましょう。

医療法人を設立するメリットは大きく以下の3つです。

  1. 個人よりも税率が低いので節税できる。
  2. 分院や介護施設などを複数展開できる。
  3. 医業承継が容易になる。

 

それでは、順番に解説していきます。

 

.個人よりも税率が低いので節税できる。

医療法人の税率が低いからといって、医療法人に利益を出しすぎることは厳禁です。理事長先生の家計が成り立たなくなる恐れがあるからです。

まずは、「理事長先生の家計を賄うにはいくらのお金が必要になるのか」を考える必要があります。そして、「そのお金を確保するためには理事報酬をいくらにすれば良いのか」を考えてください。理事報酬からは税金や社会保険料などが差し引かれますので、それも計算に入れて報酬額を決めるようにしましょう。

「誰が理事になるのか」も重要です。理事になれる可能性がある家族がいる場合は、できる限り理事に就任させ、報酬を出すようにしましょう。所得の分散によって、ファミリー全体で可処分所得を増やすことができるからです。「学生や未成年者は理事になれない」と聞くことがありますが、そのような法律はありません。行政によってはそのような指導をすることがあるようですが、理事としての実態があれば、理事就任は可能だと思われます。理事報酬は、理事の仕事内容によって適切に決めるようにしてください。バランスよく理事報酬を支払うことによって、節税効果が期待できます。

理事報酬の総額が決まったら、医療法人の利益額を計算します。医療法人の経営を継続するのかどうかなど方向性を考え、その利益が適切かどうかを考えてください。今後の医業経営計画のために、どれだけのお金を貯める必要があるのかを考えてください。

計画と照らし合わせて利益が少ないのであれば、理事報酬や経費を削減する必要があるかもしれません。多いのであれば理事報酬を上げる、経営の質を上げるために他の経費を増やすなどを検討しましょう。
大事なことは今後の医業経営、ライフプランの計画を考え、適切なバランスをとることです。そして、その中で少しでも手元にお金を残す工夫をしていきましょう。

また、医療法人を設立すると、理事が退職する時に退職金を支給することができます。これは個人開業の時にはほとんど得られないメリットですので、活用しましょう。
退職金の税制については優遇措置があり、たとえ退職金が高額であっても、その税率は個人の最高税率約56%の半分未満です。しかし、預金などで退職金の原資を貯めると、医療法人で課税され、退職金でも課税されることになりますので効果はあまり出ません。ですので退職金の原資は、生命保険を活用するのが良いでしょう。保険料を経費にしながらお金を貯めることができる保険を上手に活用すると現預金よりも効率良くお金を貯めることができます。

生命保険料控除は個人の場合は年間12万円が上限です。医療法人の場合は、条件に合う保険であれば上限なく経費にすることができますので、ぜひ有効利用しましょう。

.分院や介護施設などを複数展開できる。

これはメリットであるとともに、大きなリスクもあります。つまり、借入金で多額の設備投資を行ったにもかかわらず、思ったほど売上・利益が上がらず返済に困り、最悪の場合には倒産に至ることもあるということです。

理事長先生が一人で医業を経営して大成功した時、「案外簡単に売上や利益は上がるものだ」と考えてしまいがちです。その結果、「医師や施設長を雇用して分院や介護施設などを開設したい」と考えることが多いようです。しかし、思ったほどうまくいかないことが多いのです。

分院長や施設長は、理事長先生ほど経営者意識があるわけではありません。また、医師としての手腕はあっても経営のノウハウは不足していることが多いようです。そのような人に理事長先生と同じ成果を出すことを望むことはできません。

また、理事長自身が診療をしているのであれば、分院や施設にはなかなか目が届きません。その結果、分院、施設のマネジメントが十分に行えず、マイナスのスパイラルに陥ってしまうことがあるのです。さらに、雇用する時の約束が守られていないと、後々揉める原因になり、最悪の場合、裁判沙汰になることも珍しくありません。
分院や施設を展開する時のポイントは、「まず人物ありき」です。理事長先生が「この人なら任せられる」という人材が見つかったら、事業拡大を考えましょう。そして、その人と十分にコミュニケーションをとり、価値観や方向性を共有した上での展開をおすすめします。いうまでもなく、勤務条件や将来の約束などは、文書化しておかなければなりません。

3.医業承継が容易になる。

平成194月以降に設立された、持分のない医療法人の場合、理事長と管理者の変更手続きを行えば、簡単に医療法人の承継ができます。しかし、平成194月より前に設立された、持分がある医療法人の場合は、理事長、管理者を変更しても持分はそれまでのままです。ここを勘違いしないようにしてください。

持分ありの医療法人では、医療法人の資産が相続財産になることや持分の払戻請求などの問題から経営に支障をきたすことがあります。しかし、持分のない医療法人ではこれらの問題がほぼ解消されています。持分の払戻請求や相続税の心配をすることなく、医療法人に資産を蓄積することができるのです。

医療法人の税率は個人に比べて大幅に低く抑えられていますので、内部留保がしやすくなります。手元資金が多ければ、将来医療法人を承継する時に、新たな設備投資や医療機器の購入を自己資金で行うことができ、経営が非常に楽になります。医業承継の計画に沿って、「お金をいくら貯めるのか」を考えた上で、計画的に内部留保をするようにしましょう。

お金は計算通りに貯めていくことができますが、一方で難しいのは現理事長と新理事長の引き継ぎです。ここがうまくいかないと、承継そのものがご破算になってしまうことも珍しくありません。早めに親子間で話し合いの場を持ち、経営の現状や今後の方向性を共有して、お互いが納得のいく環境で承継ができるようにしましょう。

 

※このコラムは、2016年7月現在の情報をもとに執筆しています。

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執筆者紹介

近藤 隆二

近藤 隆二
(こんどう りゅうじ)

医業経営コンサルタント
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)
非営利団体 医業経営研鑽会・副会長
米国NLP™協会認定NLPマスタープラクティショナー

大手OA機器メーカーで12年、生命保険会社で12年勤務した後、医業経営のコンサルティングの仕事に携わる。「部分最適ではなく全体最適を考える」ことを貫き、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを得意とする。コミュニケーションを密にすることで、それぞれのお客様にとって本当に良いことは何か、お役にたてることは何かを、常に考え続けている。
近藤隆二氏のホームページ「ドクターよろず相談所」はこちら

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