医院開業コラム
事務長 解体新書(アナトミー) 第4回
2019.08.26
前回は、院長と事務長の関係についてお話しました。今回は「クリニックリーダーと事務長との違い」についてお伝えいたします。
多くのクリニックは院長とスタッフで医療サービスを行っており、事務長を据えているクリニックはあまりありません。なぜかというと、事務長は直接患者さんへの医療サービスを行うことがないため、院長自身が事務長について明確なイメージができていないからです。しかし、院長1人ですべてのマネジメントを行うことは難しく、このような場合にはスタッフの中から「クリニックリーダー」と呼ばれるスタッフを選びます。
クリニックリーダーの役割は、スタッフをまとめ、院長が関わらなくてもよい部分をマネジメントすることによって、スムーズな診療を構築することです。また、スタッフからの相談をまず受けるなど、院長とスタッフとの橋渡しも担います。しかし、経営業務を行うことはほとんどありません。この経営業務を行うのは、事務長の役割になります。ここが、クリニックリーダーと事務長との違いなのです。
院長が診療をしている時間は経営業務が止まってしまいますし、診療をしているということは、クリニックリーダーやスタッフも患者さんの対応を行っています。どちらも医療サービスに徹している中で、経営業務はできません。また、院長自身がクリニックリーダーに求めるのはスタッフをまとめることであり、経営業務をしてほしいとは考えていないことがあります。これは、リーダーに選ばれたスタッフ自身も、クリニックの経営に関する仕事がしたくて入職したのではなく、医療サービスや接客などクリニックだからこそできる仕事がしたいと考えて入職しているためです。
一方、事務長として入職する場合は、クリニックの経営やマネジメントなど、院長に変わって組織のスムーズな成長や運営を担ってほしいから採るのであり、医療サービスをしてほしいから事務長を採るわけではありません。ここも、クリニックリーダーと事務長における大きな違いです。
クリニックによっては、クリニックリーダーが経営業務に携わっていることがあります。「あそこのクリニックリーダーは何でもできるスタッフだ」と考えることもあるかもしれませんが、全員ができるわけではありません。そのため、先程もお伝えしたように、医療に関わる仕事がしたくてクリニックへ来たスタッフに対して「なぜ経営業務をしてもらうのか」を納得するまで院長が説明をすることが必要です。また、通常の医療業務に加えて、さらに経営業務も行うとなると、スタッフの負担が増えて疲弊や不満につながり、最後には退職ということになってしまうことも考えられます。
しかし、事務長の場合は最初からどのような仕事をしてもらうのかなど、事務長に期待することや役割を理解した上で入職するので、大きなハレーションは生まれません。院長が事務長やクリニックリーダーに何を求めているのかを明確にし、伝えることで、彼らのやりがいやモチベーションの向上、成長や成果にも大きな影響を与えることになります。そこを院長が理解や説明をしないまま年次が長いという理由だけでスタッフをリーダーに選んだり、事務長のような仕事を任せたりすることは、スタッフにとってもクリニックにとっても良い結果になりません。
院長がそれぞれにクリニックのビジョンを語り、これからどのようなことを期待しているのか、どういった仕事をしてもらうのかを伝え、彼らの求めるビジョンに沿った環境や仕事を提供することが重要なのです。
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