医院開業コラム
分院展開を考えるクリニックのための “医師採用力” 向上委員会 第8回
2019.04.19
クリニック専業の人材紹介業を営んでいますと、20代から70代まで幅広い世代の先生方とお話しする機会があります。今回は特に、将来のクリニック診療を担うべき20代~30代前半の若手医師が、クリニックに何を求めているのかをお伝えできればと思います。
私共が若手医師とお話していて感じる共通の感覚は「このまま上司や先輩の指導に従っているだけで、自分のキャリアは大丈夫なのか?」という疑問です。決して上司や先輩を否定しているわけではなく、医療業界が迎えるかつてない環境の変化に、自分が適応できるのかという不安が基になっています。
【環境変化の例】
➀医師の需給バランスの変化
2019年現在、医師は特に地方で圧倒的に不足しており、医師から見ると「売り手市場」です。データの解釈によって時期は異なりますが、2030年頃には需給バランスの潮目が変わるといわれています。
出典:『厚生労働省 医師需給分科会』
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_318654.html
➁求められる専門性の変化
ジェネラリストかスペシャリストか、キャリア志向にも変化が訪れています。
学位 :かつては医師として一人前の証だったが、患者さんから見てあまり影響力がない
専門医 :現時点では、科目・部位・疾病の専門性をうたえる最も一般的な資格
臨床経験:「広く浅く」または「狭く深く」から「広く深く」へ
➂コミュニケーション能力がより重要に
多職種連携/チーム医療が進み、医師からの一方的な指示ではなく、メンバーへの傾聴力や「仕切る」力など、チームをまとめるコミュニケーション能力が求められるようになっています。
➃語学のニーズ
日本政府がメディカルツーリズム(観光と医療サービスをセットにした海外旅行)を後押ししていることもあり、インバウンドが増え、国内でも外国人の患者さんを診る機会が増えています。英語、中国語など、旅行者に外国語で対応できる医師が重宝される時代になりました。
上記は、あくまで一例です。このように、医師から見た環境変化は数多くあり、若い医師ほど稼働期間が長くなるため、より長期間の適応が必要になります。高度成長期やバブル期に、医師が余る時代が想像できたでしょうか?彼らの上司や先輩が成長してきた過程とは異なるため、「自分のキャリアは大丈夫なのか?」と不安になるのは当然ともいえるのです。
実際の人材紹介の現場では、こんな事例があります。
【若手医師の獲得につながらなかった失敗例】
・ニーズに応えられなかったケース
× 20代後半の女性医師。医局に所属しており、専門医の取得までは、まだ数年間の勤務が必要。しかし、医局内で女性医師のキャリア形成に対する理解があまりないため、資格を取得する前に退局を考えている。また、医局ではパワハラやセクハラまがいの発言が横行しており、結婚や出産などのライフイベントと勤務の両立が想像しにくいとことから、弊社に登録された。 (さらに…)
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