医院開業コラム
現場発!クリニックの人材マネジメント 第10回
2017.10.23
今回は、患者さん目線で考える”来院しやすいクリニック”についてお話させていただきます。
患者さんは体調が悪く、気持ちが滅入っています。そんなときに「なぜこのクリニックに来てしまったのだろう」「本当に大丈夫かしら……」と思わせてしまっては、患者さんの不安が増すばかりです。そこで、患者さんに対してさまざまな面に気を配り、安心感を高めることが重要となります。
患者さんに次回以降も気持ちよく来ていただくには、クリニックの「第一印象」が決め手といえます。なぜなら、患者さんはクリニックへ入った瞬間に、環境面、対応面、行動など、いろいろなことを判断するからです。
以下の図は、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが考案した「メラビアンの法則」になります。
「メラビアンの法則」とは、人の第一印象は「視覚」、つまり「見た目」で判断されるというものです。みなさんも初対面の方に対し、パッと見て「話しづらそう」とか「ちょっと怖そう」と感じたことがあると思います。しかし、「話をしてみるとまったくイメージが違った」という経験をしたこともあるのではないでしょうか。
これはクリニックでも同様です。患者さんがクリニックへ入った瞬間にスタッフが無表情だったり、清潔感とは程遠い身だしなみ(頭髪の色や形、マニキュア、濃いメイクなど)をしていたりすると、「このクリニックで大丈夫だろうか」と、患者さんを不安にさせてしまいます。人の第一印象に限らず、玄関でスリッパに履き替えようとしたら汚れていたとか、待合室へ入った瞬間に雑誌が散乱していたら、不信感を与える原因にもなりかねません。
クリニックの第一印象を決めるにあたり、重要な位置を占めるのが「医療接遇」です。患者さんの要望や気持ちを理解し、”安心できるクリニック”であると印象づけることが、”来院しやすいクリニック”へとつながっていきます。 クリニックは、プロの医療接遇をスタッフに身に付けさせるための、具体的なアクションを行うべきです。患者さんに悪印象を与えてしまうと、不満が募るだけではなく、新たな問題が発生してしまう可能性も考えられます。
私たち人間は、忙しいとどうしても「素の顔」=無表情になったり、少しでも早く対応しようという気持ちから、環境面への配慮が後回しになったりします。しかし、これではせっかく一生懸命に業務をこなしていても、正当な評価は得られません。
医療従事者側にしてみれば「一生懸命やっているのに……」という気持ちですが、患者さん側は「本当にこのクリニックで良いのか」という気持ちが生じてしまいます。この両者の気持ちのずれが積み重なることで、不信感が大きくなっていくのです。
これらが、いずれクレームへと発展してしまうことも多々あります。クレームの始まりは、ほとんどが医療従事者と患者さんのほんの些細なボタンの掛け違いから起こっているといっても過言ではありません。こじれてから立て直すことはなかなか難しいもの。初めの気遣いや行動が、後々、仕事をしやすい環境づくりにつながっていきます。
何事も最初が肝心です。そのためにも、院長として医療接遇の重要性に気付いてほしいと思っています。医療従事者は、日々患者さんのために、少しでもお役に立てればという思いで一生懸命働いています。その気持ちや行動を伝える道具として、また専門技術と同じスキルのひとつとして、医療接遇を上手に使いこなしていきましょう。患者さんに伝えたい気持ちをまっすぐ素直に伝えるための「コツ」と考え、「医療接遇」のプロを目指してほしいと願っております。
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