医院開業コラム
現場発!クリニックの人材マネジメント 第12回(最終回)
2017.12.20
これまで全12回にわたり、クリニックの人材マネジメントをテーマとして、スタッフ間のコミュニケーションをはじめ、患者さんに与える第一印象の大切さ、いつも見られている意識を持つことの必要性についてお伝えしてきました。
もちろん、経営者とスタッフのつながりも重要です。経営者とスタッフは、開業前から一緒に取り組んできた言わば「同士」。そのような関係性は患者さんにも伝わります。仲良しの組織づくりを行う必要はありませんが、同じ理念の下、組織の考えにまっすぐ進みながら意見を出し合える環境を創っていくことが、選ばれる組織へと発展していくのだと思います。
では「なぜ、仲良しの組織は問題なのか」ということについて、実際にお伺いしたクリニックの例を基にお話していきます。
以前、あるクリニックから「入ったばかりのスタッフが私(院長)の言うことを聞かないので、来てほしい」とご連絡をいただきました。クリニックにお伺いし、スタッフミーティングを見せていただいたのですが、院長の発言に「さすが院長!!」と背中をパーンと叩くスタッフがいました。この方はキャリアがあるスタッフで、院長自身も「何でもやってくれるから助かる」と仰るのです。
これって良い関係だと思いますか? 当然、良い訳がありません。しかし、この応対を見た若いスタッフは、これで良いと判断してしまったのです。先輩が許されることなら、自分たちも良いと思ったのでしょう。院長は経営者であり組織のトップです。何でも言える環境下にあったとしても、敬意をもった行動や言動が必要になります。
これは院長だけに限ったことではありません。そのスタッフの患者さんへの行動を見ていると、患者さんに「○○ちゃん、体調良さそうねぇ」とか「△△(敬称なし)、今日はどうした?」といった応対をしていました。たとえ何年も通ってくださっている患者さんだとしても、患者さんはお友達でも家族でもないのです。
患者さんのなかには、それを良しとする方もいらっしゃるかもしれません。しかし、体調が悪いから受診しているのにも関わらず、呼び捨てにされた挙句に「今日は何をしに来たのか」と聞かれたら、ご本人もそれを聞いているほかの患者さんも「何だこのクリニックは!!」と怒ってしまう方のほうがかなり多いことでしょう。
このスタッフに応対について話を聞いたところ、「親しみを持って接しています」と答えました。そこで私が、「あなたがやっているのは、親しみではなく馴れ合いの行動です。初めて来院した患者さんに同じことができますか?」と聞くと、「できません」と言っていました。「親しみ」を持った行動とは、いつでも自然にできるはずの行動です。このスタッフが、もし本当に親しみを持って接しているのであれば、患者さんに対して馴れているか、馴れていないかは関係ありません。
院長として、経営者として、普段からスタッフに「一線を引くこと」を伝え続けてほしいと思います。「馴れ合い行動」には普段の行動が影響してきます。まずは、組織内でしっかりとした環境を創ってください。それができている組織は、患者さんへも自然に「親しみ行動」での応対ができています。
コミュニケーションスキルや医療接遇の本来の意味を知り、医療従事者の大事な道具として「応対力強化」にも力を入れていただきたいと思います。このコラムについては今回で12回の連載が終了となりますが、少しでもより良いクリニック創りや組織の発展に貢献できれば幸いです。
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