開業した先生の声
2024.10.28
一番は資金面だと思います。1つの診療科だけでクリニックを建てるのは非常に大変なので、私も「開業するなら医療モールで」と考えていました。宣伝効果という意味でも、メリットは大きいと感じています。階下には、すでに眼科が開業されていて、そこに通われている患者さんや、そのお子さんがうちにも来院されています。
調剤薬局が近いのもポイントですね。受診後の流れがスムーズだと患者さんから評判がいいですし、クリニックとしては薬局との連携が取りやすいです。薬の煩雑な説明はもちろんですが、アイセイ薬局さんでは服用後の患者さんのフォローアップもされています。患者さんの中には、薬をもらったものの、結局飲めなかったというお子さんもいます。そういった細やかな情報も上げていただけるので、それを踏まえて次回の診療に臨めるんです。診察時だけでなく、その後の患者さんの様子を把握できることで、診療の質の向上にもつながっています。
また、アイセイ薬局さんには、開業時のクリニック内覧会でもサポートいただきました。事前準備から当日の段取りなど、自分だけではどうにもできません。当日はたくさんの地元の方々に来ていただき、認知していただくきっかけになりました。
私は20年近く、大学病院で小児白血病の診療に取り組んできましたが、その役割をそろそろ後進に引き継ぎたいと考えたのがきっかけです。
生涯専門医として続ける道もありましたが、専門医療は日進月歩でどんどん進歩していきます。そういう世界は、やはりエネルギーとバイタリティのある人が中心となるべき。世代交代が必要だと、常々感じていたんです。
ほかに大学病院の管理職なども考えましたが、私としては、より患者さんに近い場所で働きたい、多くの人と関わりたいという思いが強く、開業して地域医療に携わることを決断しました。地域の子どもたちの成長を直接サポートできることが、今の私のやりがいです。
生き物が好きだったので、もともとは生物学系の研究者になりたいと思っていました。生物学の研究なら医学部か理学部と考えた結果、医学部に進学し、最終的には臨床医をしながら研究をしようと決めて医師になったんです。私の通う大学病院では、臨床医と研究を両立させる環境として小児科がベストだったこともあり、小児科を選びました。
誤解を恐れずに言うなら、病気の治療に100%注力できることです。大人の医療の場合、単純に病気の治療だけに専念できない場面もあります。小児科は「病気を治して、社会に貢献できる大人になってもらうサポート」という目標設定が明確です。それが自分には合っていますし、やりがいを感じています。
医師になって30年近く経つので、赤ん坊の頃に治療していた子どもは、もう立派な社会人になっているでしょう。大人になった元気な姿を見られるのは、小児科医としての醍醐味だと思います。特に、私の場合は難病の治療が専門だったので、治ったときの喜びはひとしおです。自分の子どもの成長と同じようにうれしいですね。
「地域の子どもたちの健康は私が責任を持ちます」という理念を掲げてスタートしました。病気はもちろんですが、地域のお子さんの悩み事には、できる限り対応したいと思っています。どんな悩み事でも、まずはお話を聞いて、それに対して適切なアドバイスをする。それが地域クリニックの役割です。プライマリーケアの場として、相談しやすいクリニックでありたいと思います。クリニックだけで治療が難しい場合は適切な施設を紹介していますし、各施設と連携しながら子どもたちの健やかな成長を支援していきたいです。
開業場所を探すにあたり、地元で、比較的自宅から近い場所を希望していました。たまたま、この地域のお話があったので、コンサルタントの方と相談しながら、自分でもリサーチを進めました。小児科激戦区ではないこと、子どもの数や学校の様子など、考慮すべき点はさまざまです。“この地域なら小児科のニーズがある”と判断し、開業に至りました。
5月に開業してから患者さんの数は毎月右肩上がりで増え、どんどん忙しくはなっています。しかし、完全予約制なので、診療時間を大幅にオーバーするようなことはありません。スタッフもしっかり対応してくれていますが、一方でこれ以上は診られないという上限もあります。そうなった場合は医師を雇うことになりますが、現状では考えていません。私が診療できる範囲、責任を持てる範囲でやっていきたいと考えています。
患者さんのちょっとした悩みにも寄り添って対応できるので、医師として、これまでとは違ったやりがいを感じています。大学病院での専門医時代は、特殊な病気を抱える子どもさんと向き合ってきましたが、今は世の中の多くの子どもたちが抱える悩みと向き合っています。
「命に関わるようなことではないし、病気かどうかもよく分からない、これは何だろう?」と不安に思うことに寄り添って対応するのが、かかりつけ医の役割です。「咳が続く」「湿疹が出ている」「二次性徴が始まった」「精神的な問題で学校に行けなくなった」「親子関係に悩んでいる」など、病気以外でも子どもたちが困っていることはたくさんあります。病院に行くようなことじゃないと1人で抱えるのではなく、気軽に相談できる場所があることが大切です。
万が一、そういった悩みの中に紛れて重篤な病気が見つかった場合は、適切な施設で専門医に診てもらう。そういう役割分担をしていくことが、医療をする上で大事なのだと改めて感じました。専門医としての経験、クリニックの医師としての経験、その両面があって今、ようやく医療のあるべき全体像が見えてきたと実感しています。
開業場所という点では、その地域に競合するクリニックがあるかどうかが一番大事だと思います。患者さんが多そうな地域に目が行きがちですが、患者さんが多いところには医師もたくさんいます。医療のニーズが、ある程度満たされている地域での開業は難しいでしょう。
また、必ずしも駅が近いからいいわけでもありません。いくつか候補地がある場合は「そのエリアで、自分の医療がどれくらい求められるか」という視点で検討したほうがいいと思います。
あとは、スタッフの数ですね。スタッフが無理なく働ける状態でスタートできるのがベストです。忙しくなってきたときにスタッフの不満が溜まってしまうと、クリニック全体がうまく回らなくなります。できれば、ある程度余裕のある人数で始められるといいですね。
地域のかかりつけ医として、愛されるクリニックになっていきたいですね。できる限り地元の患者さんのニーズに応えられるよう、クリニックとして掲げた理念を持ち続けながら、医療の質を上げ、患者さんの満足度を高める。「ここに来れば、なんとかなる」と皆さんに安心していただけるクリニックになっていきたいと思っています。
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