開業した先生の声
2023.06.26
相乗効果です。この医療モールで最初に開業したのが私のクリニックだったので、正直“医療モール”という意識はなく、当初は立地で開業場所を選びました。しかし、今は皮膚科、眼科が入って医療モールとなり、互いに連携できるのが一番の利点です。うちが内科、外科、整形外科、肛門外科を標榜していて、そこに眼科と皮膚科が加わったことで6科になりました。いろいろな病院に行かずに済むので、患者さんにとっても便利だと思います。
「眼科に来たついでにうちに来た」という患者さんもいますし、うちのクリニックに通いながら皮膚科にかかっている患者さんもいます。医療モール内で紹介したり、されたりということが多く、今後もますます増えていくと思うので、これからも連携を取りながらやっていきたいですね。医療モールでの開業は、そういった意味での相乗効果が非常に大きいと実感しています。
【外観とMAP】
体力的にも精神的にも元気を保てているというのが、まず一つ開業を決めた理由です。私は開業してから60歳になり、還暦を迎えました。昔は「60歳=隠居生活」というイメージでしたが、まだまだ元気です。これから1年1年若返っていこうと思っています。
開業は、だいたい医師になってから10年~20年目くらいで考える先生が多いです。その点で言うなら「これまでの経験を生かせば開業しても困らない」と、自信を持って開業できました。ただ“医者は一生勤勉でなければならない”というのが、私の考えです。医学は進歩するので、終わりはありません。アンテナを張って一生勉強。そうでないと、最先端の医療は提供できませんから。
あと、息子が医学部に入ったことも開業への後押しとなりました。跡を継ぐかどうかは分からないですが、もし私が体力的にしんどくなっても、息子がクリニックをやりたいなら任せられると思えたことは大きいですね。
一番は、立地です。これまでにいくつか候補は挙がっていましたが、尼崎で開業したいという想いがありました。慣れ親しんだ尼崎で開業できることや、前病院から近く、距離感もいい場所でした。
また、アクセスも視認性もいい上に私が熟知している場所でもありました。そんな最適な場所を紹介されたので、最初はすごく驚きました。「すぐにここを押さえよう!」という感じになりましたね。前病院と連携が取りやすいことも、患者さんにとって利点になっています。
勤務医時代とは違い、大きな手術をすることがなくなりました。肛門外科で痔の手術などはしていますが、開業すると外来中心になります。これまでは手術で患者さんの命と関わってきたけれど、開業してからは別の形で患者さんの命に関わることが増えました。
例えば、他の病院で痔と診断されたけれど、私の触診で直腸がんが見つかり、救命につながったということもあります。クリニックの診療方針に掲げている「適切な病診連携、適切な診療科への誘導」が救命につながったケースです。いろいろな疾患を正確に見極める目を持って診療しないといけない。改めてそう思った症例であり、貢献できた症例でもあったと感じています。
自分の診療スタイルが確立できたことです。一つは、7時半からの早朝診療。ここは通勤・通学の方が多いので、通勤・通学前に薬を出してもらうとか、そういったことに使ってもらえると思ったんです。例えば、ケガをした後、経過を診てもらうだけなのに9時からしか病院が開いていなくて会社や学校に遅刻する……などといったことがないよう、朝早くから診療を行っています。他にも、急な熱や怪我があるからできるだけ早く診てほしい場合など、患者さんのニーズに応えられるように診療時間を設定しています。
もう一つは、発熱している患者さんの診療です。安心して診察が受けられるよう、発熱外来用に陰圧診察室(第3診察室)をつくりました。専用の診察室をつくれば、一般患者さんの診察と、発熱外来の患者さんを同時に診察できます。
発熱外来には専用の待合室とトイレもつくりました。患者さんが増えたときは収容困難なこともありましたが、多くの発熱患者さんに安心して利用いただいています。
慢性疾患で長年病気を抱えている患者さんを診ていくのが内科系疾患で、外科系疾患は主に急性疾患を扱い、手術さえうまくいけば病気が治ります。結果が早く出て治療の効果判定が明瞭である疾患を診ていくほうが自分の性分には合っていると思い、外科を選びました。
30年を超えるこれまでの経験の中で3,000例以上の手術を行い、その一方で内科の患者さんもたくさん診てきました。その経験を生かし、現在は内科の診療もしています。
まずは、地域に根差した診療です。クリニックを頼ってくださる地域の患者さんに、私一人だけでなくスタッフ全員で協力しながら、全力で適切な医療を提供していくというのがうちの理念です。受付スタッフも、患者さんに気持ちよく診療を受けていただけるよう細かな気配りをしながら、患者さんを常々笑顔で迎えるようにしています。
「病気を診て、人を見ず」という言葉がありますが、データだけを見て診察することを私は医療とは思いません。顔を見て、体を触って、聴診器をあてて、話を聞く。それが私の診療です。それを踏まえ「ワンストップ診療」「適切な病診連携・適切な診療科への誘導」をクリニックの診療方針としています。
「どんな診療も決して断らず、患者さんの言葉に真摯に耳を傾ける、患者さんがあちこち行かずに済むよう私が診られる一般的な疾患であればできる限り診察する」。これが「ワンストップ診療」に通ずる想いです。もちろん、私一人の診療では手に負えないような専門的な疾患の場合は適切な診療科へ誘導を行っています。
他にも、電子カルテと自動問診システムを導入した「未来クリニックの創造」、一般患者さんと発熱患者さんを同時に受け入れられる「万全な感染対策」、通勤・通学前の患者さんが立ち寄れる「早朝診療」と、全部で5つの診療方針を掲げています。
医療圏や、どれだけ集客できるかとか、周りにどんなクリニックがあるとか、一般的な課題はいろいろあると思います。しかし、一番大切なのは、開業前に“どんなふうに開業したいか”をしっかり考えることです。クリニックのPRポイントを何かしらつくっておかないと、周りのクリニックと差別化できません。
例えば、2つのクリニックがあって患者さんが迷っている場合、クリニックの特徴を出しておくことが大切です。私のクリニックでは、先にお話したような5つのポイントを挙げています。自院のポイントを開業前につくって、それを目標にし、開業に向けてがんばるのがいいのではないかと思います。
あとは、自分自身の健康管理を怠らないようにすることも重要です。定期的な運動やストレス解消の方法を持つことも大切なことです。今後も引き続き、気を付けていきたいと思っています。
まだ開業1年目なので初めて当クリニックを受診される患者さん(新患)も多く、当クリニックの5つの特長を生かしながら現在の診療を継続し、地域医療に貢献していきたいと思っています。
今後の目標としては、患者さんが通いやすい地の利を生かして、また患者さんのニーズを分析して新たなことにも次々チャレンジしていきたいですね。
また、外科医として手術に携わってきた経験を生かし、肛門外科手術をはじめとしたクリニックで可能な外科手術も増やしていきたいと考えています。
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