開業した先生の声
2025.11.14
物件を探すにあたって最も重視したのは「立地」でした。しかし、地域で一番いい立地は、なかなか空いていません。仮に空いていたとしても、個人の力ではどうにもならないのが現実です。その点、医療モールはプロによる下調べを経た上で一等地に建てられていることが多いです。「地域で一番いい物件に入るなら医療モールは有利だ」と考えていましたが、今回良い物件との御縁があり入居を決めました。
一般的に、内科は軌道に乗せるまで2~3年かかることが多いのですが、幸い開業から1年で目標の患者数に達しました。目立つ場所にあるので地域の視認性が高いことや、医療モールには整形外科・皮膚科・肛門外科も入居しているため認知度が高いことが要因だと思います。私一人の力ではなく、ほかの先生方の力もあってこそ。結果的に、医療モールを選んで正解でした。
地域の患者層です。いくら駅前の一等地といえども、梅田に開業するのと、現在の我孫子に開業するのとでは患者層がまったく異なります。糖尿病の患者さんには若い方も多いですが、心臓病の患者さんの多くは65歳以上の高齢者です。それを踏まえ、高齢の方が多い住宅街、かつ利便性が高い場所を考えていました。
いくつか地域をピックアップして人口予測などで比較してみると「高齢者率は高いが、若い人口が少ない」「2050年までの人口減少が激しい」など、地域によってさまざまな特色が見えてきます。開業後数十年は診療を継続する必要がありますので、今後も周辺人口が維持できるエリアであることはポイントのひとつと考えます。併せて診療圏調査なども確認し、高齢者もファミリー層も多い我孫子に決めました。
「医師になったからには命を救いたい」という思いから、命に直結する循環器内科を選びました。しかし、循環器内科で研鑽を積む中で、心臓血管系の病気は糖尿病と密接に関わっていることを改めて実感したんです。例えば、心疾患がある患者さんは糖尿病を併発しているケースが多く、糖尿病の患者さんも心血管系リスクが高いため循環器疾患が併存していることが多いです。
また、糖尿病治療薬の開発スピードは非常に速く、種類が増えている分、治療薬の選択が重要になっています。患者さんの病状に応じた薬を選択していかなければ「もっと良くなるはずなのに良くならない」「もっと薬を減らせるはずなのに減らせていない」という事態が起きてしまいます。
「糖尿病を深く知ることは、患者さんの救命にも必ずつながる」――そういった思いから、循環器内科に加え、糖尿病内科としての専門性を身に付けました。
患者さんは、病気別に分かれているわけではありません。いろいろな病気を合併しているのは当然です。循環器内科と糖尿病内科の2科目を専門とすることで、それぞれの疾患を総合的に診られるようになりました。
生死をさまようほどの病気を、もっと未然に防ぎたいと思ったのがきっかけです。勤務医時代は、急性心不全や急性心筋梗塞などで救急搬送され、緊急入院となる急性期の患者さんを数多く診てきました。心筋梗塞で入院して初めて自身が糖尿病だった、高血圧だったと気付く患者さんは非常に多いです。ほかにも、病院には通っているけれど治療のコントロールが十分にできておらず、漫然とした薬剤治療で病状が悪化している、または悪化の兆候が見過ごされているという患者さんも多くいらっしゃいます。
本来であれば、糖尿病や高血圧は、それだけで命に関わるようなことはあまりありません。重症化する前の段階で食い止められるチャンスは、きっと何度もあったはずです。病気は早期発見・早期治療が原則。早い段階で適切な治療をしたいと考え、開業に至りました。その思いは、開業後の今も変わりません。
実際、現在は重症患者さんの急性期を診察することは少なく、安定されている患者さんの診察がほとんどです。ただその中には入院適応になる疾患の前兆があったり、初診で救急搬送が必要なケースがあります。勤務医時代の経験があったからこそ、現在の早期発見・早期治療につながる医療ができているのではないかと思います。
「患者さんを総合的に診る」という理想の医療が実現できていると思います。勤務医時代は循環器と糖尿病の2つの外来を担当していましたが、以前勤務していた病院では循環器内科ではインスリンの処方ができませんでした。
そのため、病気を合併している患者さんの場合、ある日は循環器内科へ、またある日には糖尿病内科へ来てもらうといった状況だったんです。縦割り診療だったので、1人の患者さんを一貫して治療することができず、歯がゆい思いをしていました。
しかし、開業した今は一人ひとりの患者さんを総合的にマネジメントできます。心臓の治療をしながら糖尿病の治療もできる、両方の症状をカバーする総合的な治療薬の処方も可能です。1人の患者さんを多面的に治療できることに、開業医として一番のやりがいを感じています。
開業すると、良くも悪くもすべてが自分の裁量次第になります。目指す理想の医療も実現できますし、診療時間やスタッフの採用なども自分で決められます。自由な反面、怖さもありましたが、幸いうまくいっているのでありがたいなと感じています。立地のおかげで、患者さんが来なくて悩むということもなかったです。
患者さんにとってベストな医療を提供し、患者さんと長く付き合っていきたいと思っています。特に、糖尿病などは長く付き合っていく病気のひとつです。勤務医時代は、異動などもありましたが、開業医として今後20年、30年と続けば、患者さんとは一生の付き合いになります。
家族のように慣れ親しんだ関係になっていくはず。きっと、そう思って来てくれている患者さんも多いでしょうし、私自身もそういう思いで患者さんと接しています。もともと、人と接することが好きなので、そういった患者さんとの縁を大切にしていきたいです。
今後の診療報酬改定などを考えると、開業するなら今がラストチャンスだと思います。仮に診療報酬が引き下げられれば、クリニックの経営に影響するので、個人的にはできるだけ早いほうがいいのではと思いますね。
場所選びという点では、自分が愛せる街を見つけてください。開業となると、その地で生涯働くことになるので、やはり自分が愛せる街でないと。
我孫子は大学時代のキャンパスが近く、私にとって馴染みのある場所です。あびこ山観音寺(日本最古の観音霊場)や多数の神社が点在し、昔から住む地元の方々も多い。歴史を感じられる一方、新しいマンションも建設され、活気があります。いわゆる“大阪のおっちゃん、おばちゃん”もたくさんいる面白い街です。
私は、この街の空気感を気に入っています。同じ市内でも地域によって雰囲気はさまざまですが、これは診療圏調査の数字では分からないことなんですよね。自分で足を運んで商店街を歩いてみたり、おいしいごはん屋さんを探してみたり、行き来する人の様子を見たりと、物件を紙で判断するのではなく、自分の目で確かめてください。
正直なところ、患者さんが来るかどうかはやってみないと分かりません。患者さんが来てくれなくても、自分にとって愛着ある場所なら、そこで開業する理由になりますし、自分の気持ちにもプラスに働いてくれると思います。
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