STEP7
医院設計で最も大切なことは、クリニックは患者さんのための空間である、という点です。これが基本の考えとなることを、まず認識しましょう。そこで重要になってくるものが「医院構想」です。
内装設計は、診療コンセプト・経営理念を策定する際に「どのような医療を誰に向けて提供するのか」についてまとめた想いを図面に反映していく工程といっても過言ではありません。同じ標榜科目でも同じ内装のクリニックにならないのは、診療コンセプトや経営理念が異なるからです。
「誰のためにどのような医療を提供するための空間なのか」を常に意識して、設計・施工工程を進めることをおすすめします。
クリニック内装の設計・施工には、建築士法や建築基準法、建設業法、バリアフリー法等などの法律も関わってきます。その中で、開業計画に最も影響するのは、有床診療所か無床診療所か(=入院施設の有無)という点です。
例えば、建築基準法上、20床以上が病院と規定され、それ以下は診療所扱いですが、19床以下でも建築物としての分類は「特殊建築物」と規定され、避難や内装制限等の規制が無床診療所に比較し格段に厳しくなるので注意が必要です。
バリアフリー法や地方公共団体条例の規制などもクリアする必要があります。例えば、東京都の場合、無床でも床面積によって定められる規定が変わります。
このような医療施設特有の法律や規制について、全ての建築士・設計士が知識・経験を持っているとは限りません。依頼をする際には、設計事務所や施工会社の実績をしっかり確認するようにしましょう。
設計・施工の発注方法には、以下の2パターンがあります。
それぞれのメリット・デメリットを確認しましょう。
どちらが良いということはありませんが、どちらの場合でも信頼できる企業であること、医療施設の設計・施工に明るいことが重要です。また、アフターメンテナンス等も依頼できるか否かも検討要素のひとつとなります。
メリット
デメリット
メリット
デメリット
医療施設においては、医療機器の導入は必須条件となりますが、それらの導入に際しては内装工事段階で注意すべき点があります。それは、電気設備や空調整備、水道設備などの設備工事です。
例えば、CTやMRIを導入する場合、大容量の電気が必要になり、必要に応じてブレーカーや分電盤の新設、増設などを行うケースがあります。
そのほかにも、バリアフリートイレの設置においては水道設備が対応できるかや、クリニックの空調機器の入れ替えに空調設備等が対応できるかなど、各設備工事がどのような対応が可能かを見極めておく必要があります。
また、医療物件の選定でもお伝えしましたが、ビル診の場合だと電気容量の増設ができないこともあります。設備要件については、早いうちから確認をしておきましょう。
内装設計段階でしっかりと検討しなくてはならない項目のひとつに動線があります。
患者さんはもとより、スタッフも滞りなく移動できる動線を設計していくようにしましょう。また、患者さんとスタッフの動線を分けることで、患者さんは落ち着いて院内の時間を過ごすことができます。
東京都などでは条例も設けられていますが、バリアフリーの動線の確保も大切です。車椅子や障害を持たれている方に配慮した出入口や通路幅、段差、トイレなど、動線に加えて、その内装も考えましょう。
エントランスから入ってきて、受付から診察までの流れがすぐにわかるようなレイアウトにしておくことも大切です。待合室などは、感染症の対策として人との距離が保てるレイアウトに対応できるような考慮も加えておくと良いかもしれません。
内装の設計・施工で忘れてはならないのが、実際に手を動かしてくれる建築士・設計士や施工業者との関係性です。当然ながら、ここでも各担当者に任せっぱなしはよろしくありません。
設計段階では、建築士・設計士さんと細やかなコミュニケーションを取っていくようにしましょう。どのような内装が良いか、だけではなく、前述にもある診療コンセプト・経営理念もしっかり伝えましょう。
工事段階に入っても、可能な限り、週に1回は現場に足を運ぶことをおすすめします。工事の進捗を確認することもできますし、場合によって初期段階であれば軽微な変更に対応してもらえる可能性もあります。
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