当社は調剤薬局を生業としていますが、同時に医療モール開発事業を展開しており、先生方へ開業物件をご提案する立場でもあります。
ご存知の通り、調剤薬局は医療機関が発行する処方箋をもった患者様が薬局に来ていただくことで、はじめてビジネスが成立します。つまり、門前の医療機関が盛業していただくことが、調剤薬局のビジネスにとって非常に重要なファクターなのです。
それゆえに医療モール候補地の立地判定については、開業をご検討されている先生方と同じ目線、「自分ごと」として、当事者意識をもったシビアなスタンスで臨んでおります。
今回は、医療モール単位ではありますが、過去1年間における来院患者をマップに落とし込んだ素材をもとに、実際の来院状況=リアル診療圏がどのようなものかを考察してみたいと思います。
それぞれの図において、フラグは医療モールの所在地、★印は個々の患者様の住所、丸数字は医療モールで診療を行っているクリニックと競合する診療科の医療機関を表します。
また、ピンク色の線は行政区の境界線を表しています。なお、来院患者は当薬局で処方箋を受付した患者様のみですので、他薬局をご利用の患者様や処方箋未発行の患者様は含まれておりません。
事例Aは、東村山市にある内科・耳鼻科・小児科の3科のクリニックによる駅直結型の医療モールです。医療ランドマークとして地域住民間での認知度は高く、また車で来院するにも利便性の高い施設であるため、東西約3kmという広範囲からの来院が確認できます。
西武多摩湖線による分断が見受けられますが、特に顕著なのは行政区の境界による分断です。清瀬市や東久留米市のほか、距離的にはそれほど離れていない所沢市からの流入も分断されています。耳鼻科・小児科の患者様に関しては、医療費助成の影響でこのような結果になっていると考えられます。
事例Cは、千葉県の白井市と鎌ヶ谷市の境界に位置する、内科・小児科・整形外科の3科のクリニックによる郊外型医療モールです。徒歩や自転車だけでなく、クルマも住民の主要な移動手段になっている地域です。約90台の駐車場を有しています。
距離では北東4km圏内まで来院が見受けられますが、「車到達時間」による診療圏では10分圏内となっています。集客力のあるスーパーマーケットが隣接しており、スーパーの商圏と関連があるように思われます。
この事例Cでは行政区による顕著な境界分断は見受けられません。実は、千葉県の医療費助成はどの市町村も「千葉県内の医療機関」が対象となっており、そのことが影響していると思われます。
この3つの事例からもわかるように、医療商圏は個々の医療機関ごとに異なる、唯一無二のものです。同心円の一律距離による設定では、その精度が低くなると言わざるを得ません。
診療圏調査では、少なくとも分断要因を検証し、住民の生活動線を推測・反映させることで、可能な限り診療圏調査の精度を高める取り組みが必要であるといえます。また、小児を対象とする診療科では、診療圏を設定する際に近隣地域の医療費助成の制度について把握しておく必要があります。
開業支援を標榜する事業者は多岐にわたりますが、このように様々な医療機関の来院状況を分析できる業態は調剤薬局に他なりません。また冒頭にも申し上げたように、当社は立地判定において常に当事者目線で取り組んでおり、独自の診療圏調査ナレッジを形成しています。
当サイトでご紹介している医院開業物件は、この独自診療圏調査を通じて厳選済みの物件となりますので、ぜひご覧ください。
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