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笠浪真 イソノ医院の承継記

カツオ理事長解任か? 継続か?

【前回のあらすじ】
膨れ上がる人件費などで経営赤字となったイソノ医院。経費のいざこざをきっかけに、カツオとマスオ、ノリスケの間に不穏な空気が流れ始める。ノリスケはカツオを解任してマスオを理事長にすることを画策し、これにマスオも賛同。あとはサザエの承諾を得られれば、医療法人の社員票が過半数に達することとなり、カツオを解任できる。果たして、カツオはこのまま解任されるのか? それとも……。

イソノ医院の主な登場人物

 

 

先月の月次決算の報告によると、先月も赤字ですね。◯◯費や●●費などは削減していますが、まだマスオ先生とノリスケ事務長のお給料が圧迫しているようです。

 

そうですか。確かに、このままでは経営が厳しいですね。理事報酬については、一度全員で話し合わないといけないとは思っているのですが。

 

そういえば、そろそろ社員総会が近い時期ですよね。これを機会に、一度理事報酬について、ご家族で話されたらどうですか?

 

確かに、ノリスケおじさんから「社員総会が近い」という話を聞いた気がします。でも、僕はそんなに詳しくなくて……。

 

たしか、医療法人ISONOの社員は5名ですよね?

 

いやいや、今さら何を言っているんですか。うちのスタッフはもっと多いですよ。看護師に、理学療法士に、医療事務に、受付に……

 

あの、社員とはスタッフのことを言うのではないのですが……。

 

え!?

 

医療法人の社員と一般企業の社員とでは“社員”の意味が異なります。医療法人の社員は、運営の議決権がある人のことです。

 

……

 

一般企業でいうところの“株主”に近いです。おそらく、医療法人ISONOの場合は理事の方が社員になっていると思うので、カツオ先生、マスオ先生、ノリスケさん、サザエさん、フネさんに議決権があるかと。

 

なるほど、すっかり勘違いしていました。その5人で話し合う、ということですね。

 

そういうことになります。意見が割れた場合は、社員の過半数で決まります。

その夜

 

 

姉さん、イソノ医院は先月も赤字だったよ。僕の給料は下げたのに。やっぱり、マスオ兄さんとノリスケおじさんも下げないとだめだよ。カサナミ先生が言うには、今の売上だと月◯◯万円くらい下げる必要があるって。

 

……

 

マスオ兄さんの給料を下げることで、タラちゃんの学費とかいろいろ苦労かけると思うけど、このままでは……。

 

カツオ、本当にマスオさんのお給料を下げるだけで大丈夫なのかしら?

 

え!?

 

このままあんたがイソノ医院を潰したら、将来タラちゃんが跡を継げなくなってしまうわ。こうなったのは、あんたがお金にだらしなくて、ノリスケさんに全部任せきりだからじゃない!

 

……

 

だから、今度の社員総会であんたに理事長を辞めてもらおうかと思っているの。新しい理事長にはマスオさん、でもあの人は経営が苦手だから経営はノリスケさんに……

 

何を言ってるんだよ姉さん、それじゃ乗っ取りじゃないか! そんなの、僕がいいっていう訳がないだろう!

 

あんたが嫌だと言ったって、社員決議で過半数票を得ればあんたは解任されるわ

 

それはいけません!

 

母さん! まだ起きてたの?

 

気になる話をしているなと思って聞いていたら、サザエは何てことを言うの!

 

だって、タラちゃんが医院を継げなくなることを考えると……

 

サザエ! マスオさんに言われたかどうか知らないけど、イソノ医院をマスオさんとノリスケさんに任せたら、ますますだめになるわ! そもそも、勝手に個人的な飲み代を経費で落とそうとする人なんて信じられない!

 

そうだよ! 医院の赤字が続いているのはそもそもマスオ兄さんが来てからだし、ノリスケおじさんはだいぶ費用を削減してくれたけど、相変わらず給料は高いし。

 

それに、マスオさんは患者さんからもスタッフからも人気がないわ。仕事も機械的で対応もそっけないし、融通も利かない。あのままでは、患者さんが離れて売上も下がるわ

 

母さんは何気に相談されやすいから、スタッフからの相談は僕より多いし、実際にそうなんだろうね

 

ノリスケさんも事務長としての仕事はするけれど、スタッフの相談とかは何もしてくれない。代わりに私がこっそり相談を聞いているんだけど、スタッフから「ノリスケさんは何をしているの?」という不満も出ているの。数字は見ているけど、医院のスタッフのこととかは何も考えていない。それであの給料は高すぎるわよ。

 

そうは言っても、このままでは……

 

とにかく、私はマスオさんとノリスケさんが実権を握るのは反対よ。サザエも少し考え直してくださいな。私とカツオ、サザエの3人がいれば、過半数でカツオの解任を避けられるわ。

 

母さん、ありがとう!

 

それにしても、最近のイソノ医院を見ていると、きっと今頃お父さんは天国で怒っているでしょうね。情けない……。

同じ日の夜

 

 

バッカモーン!

 

ぎゃあ! おじさん! 寝ているときに、びっくりするじゃないですか!

 

お前といい、マスオといい、2人がうちの医院に来てからロクなことがない。

 

今イソノ医院はずっと経営赤字が続いていて、これもカツオくんが頼りないからで……

 

バッカモーン!

 

ぎゃあ!

 

お前、わしが何も見ていないとでも思っているのか? ずっと天国から医院の様子を見ているんだぞ。お前もマスオも、本当にロクなことをしない!

 

ですが、おじさん、このままでは、マスオさんも私も給料を下げられそうで……

 

何を言っておる!そもそも、お前達の給料が高すぎなんじゃ! しかもお前達、給料分の仕事をしていないじゃないか! ロクに患者さんやスタッフのことも考えずに、自分のことばかり考えおって!

 

そんなことありませんよ! 僕もマスオくんも一生懸命やっているじゃないですか!

 

お前は少しでも医院の売上を上げたり、患者さんやスタッフの不満を聞いたりしたことがあるのか! 医院のお金を使って酒を飲みながら愚痴を言ってばかりで、ロクに働かないものだから、医院の雰囲気も悪くなっているじゃないか!

 

……すみません。

 

カツオもまだ頼りないが、マスオくんは全然経営に向いていない。そして、お前はうちの医院を乗っ取って、やりたい放題しようとしている。わしが見ていないと思ったら大間違いだぞ! このバカモンが!

 

ひ~! ご勘弁を~!

翌朝

 

 

あなた、あなた! 朝ですよ、そろそろ起きてください。

 

う、うーん

 

どうしたんですか? だいぶうなされていたみたいですけど。

 

うーん、夢にナミヘイおじさんが出てきて、めちゃくちゃ説教されたよ。あんなに怒られたのは、子どものとき以来だ。

 

あらあら、イソノ医院のことが心配で天国からずっと見ているのかもね。あなたもしっかりしなきゃ!

 

うーん、ちょっと考え直すか……。

 

こうして、ノリスケが画策したカツオ理事長解任は未遂に終わった。その代わり、社員総会でマスオとノリスケの理事報酬を下げることが決議。結果として、イソノ医院の経営は何とか黒字に転じ、危機を脱することができた。また、フネの意向で、今後はもっとスタッフとのコミュニケーションや教育体制をしっかりとり、医院全体の業務における生産性の向上を目指すこととなる。しかし、危機を脱して経営改善に動き始めたイソノ医院に、不満をくすぶらせる1人の男がいた。その名はマスオ……。

次回につづく

 

●税理士笠浪真のワンポイントアドバイス

医療法人のイメージ図(社団の場合)

医療法人の社員とは、一般企業でいう社員のことではなく、「医療法人の重要事項を決定する議決権を持つ人」を指します。原則として、3名以上の選任が必要です。そのため、株式会社でいえば、株主に近い立場にあります。社員総会についても、株式会社でいうところの、株主総会に近いものと考えて構いません。株主と社員の異なる点は、出資(基金)の有無や金額にかかわらず1人1個の議決権を有すること(医療法46条の3の3第1項)と、配当が禁止されている(医療法54条の1)ことです。

社員総会によって、原則3人以上の理事(医療法46条の2第1項)と、1人の理事長が選任されます。理事は株式会社でいうところの、取締役などの役員に相当します。小中規模の医療法人では「理事=社員」となっているケースが多いですが、必ずしも社員の中から理事を選ぶ必要はありません。

また、理事だけでなく、監事も1人以上選任する必要があります(医療法46条の2第1項)。監事とは、医療法人の業務や財産の状況を監査する人のことを指します。そのため、医療法人の理事、理事の親族、スタッフ、利害関係のある営利法人の役員、顧問の税理士などは就任できません。

注意すべき点は、社員総会では社員の過半数の議決によって理事長や理事、監事を解任できることです。社員の過半数を理事長の信頼できる方で固めておき、極力解任を防ぐ体制とするのが一般的です。しかし、それでも社員が何名か不満を抱くことになれば、解任もあり得ます。特に新しく社員を迎える場合は、いざこざをきっかけに対立することもあるので注意が必要です。

執筆者紹介

笠浪 真(かさなみ まこと)プロフィール笠浪 真(かさなみ まこと)
税理士法人テラス 税理士・MBA


京都府出身。国立滋賀大学経済学部卒業の後、同大学院にてMBA取得。在宅・特別養護老人施設にて、介護士として医療福祉の現場に携わり、会計事務所・法律事務所・コンサルティング会社を経て、税理士事務所を開業。これらの経験を、さらに医療の現場に役立てたいとの思いから、慶應義塾大学大学院医療マネジメント専攻にて、医療経営を学び直す。平成25年「医師からファーストコールされる存在」として、病院・診療所・歯科医院の会計に専門特化した税理士法人テラスを設立。経営理念に共感した医師・歯科医師より、多くの支持を得る。
税理士法人テラスのサイトはこちら
※このコラムは、2020年4月現在の情報をもとに執筆しています。

経験豊かなサポートスタッフが、先生方一人ひとりのニーズに合わせた医院開業サポートを行っております。個別相談を無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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